マングローブ資源管理
2011.8~
住民主体でマングローブ植林を続けてきた村が、植林地を活用した地域おこしをしています。現代社会のニーズに合わせて、どのように人間社会とマングローブとの関りを築いていくのかを考えます。
人間社会とマングローブの関わり合いの変化
潮の満ち引きとともに表層が冠水・干出する海と陸のはざまを潮間帯と呼びます。この潮間帯に分布する植物がマングローブです。
インドネシア・南スラウェシ州はエビや海藻養殖が盛んな地域でもあり、多くの潮間帯ではマングローブが伐採され、養殖池に改変されてきました。マングローブは海の生態系にとって重要であるだけではなく、海岸線の防波堤の役割もになっていることから、マングローブ生態系が破壊されたことで、人間社会にも次第に様々な悪影響が出始めました。
ボネ湾に面するシンジャイ県トンケ・トンケ村でも海岸浸食の被害が村の住宅域にまで及び、生活圏を守るため石やサンゴ礁で防波堤を作りましたがうまくいきませんでした。そこで、1980年代からマングローブの胎生種子を海岸線に植林する試みを始めました。
初めは数人で、そして、その数年後には、村内で組織化を進めながら植林活動を続け、現在では〇●Haのマングローブ林を村と海のはざまに創り出しました。このマングローブ植林による効果は、海岸浸食から守られただけではなく、地下水の塩分濃度も下がり、生活用水も容易に確保できるようになりました。
その当時、住民主体でのマングローブ植林活動の成功事例は珍しく、また環境保護ブームの潮流にものり、大きな注目を集めることになります。国内外から数多くの政府機関やNGO団体や研究者が視察に訪れるにつれて、マングローブはこの村のアイコン的存在となってゆきました。
しかし、そのことが、これまで地道に活動を行ってきたグループ内に大きな派閥を生み出すきっかけとなりました。


マングローブは誰のものか? 新たなマングローブと人間社会の共存のカタチとして植林地の保全・活用モデル
さらに、1990年にインドネシア政府によって森林法が定められ、住民が植林をしてきたマングローブを含めて無許可で伐採することが禁止されてしまいました。これは、住民の思惑から少し外れてしまいます。
インドネシアの海域は、オープンスペースです。しかし、マングローブは干潮時に陸域となり満潮時に海域に沈み、陸と海の境界線が曖昧なところです。さらに、マングローブは大きな根を張る植物であり、潮の満ち引きに応じて変化する潮流によって運ばれる砂泥を堆積させていくことで、生息する生物相を変化させるだけでなく、海岸線の環境をも大きく変えていきます。
マングローブを植林してきた村の人々は、将来的にマングローブ植林地を埋め立て陸域を広げることで、養殖池や住宅地にすることを考えていました。そのため、村内では積極的にマングローブ植林域の売買もされていました。それが高いモチベーションのひとつとなり、マングローブ植林活動が進められてきたともいえます。この陸域でも海域でもない曖昧なマングローブ域は誰のものになるのでしょうか?
住民たちは、各自が植林したマングローブは植林した人の所有林であると主張します。しかし、1990年に成立した森林法によって、伐採することができなくなっています。
現在、村では、マングローブを伐採せずに活用する方法を模索しています。森林局と観光局が大規模な予算を投入し、政府主導で現在、マングローブ植林エリア内の回廊やバンガローが設置されました。この村は、シンジャイ県の中心部から約5㎞の位置にあり、特に休日は観光地として、訪れる人も増えてきています。
近年、インドネシアの国内においても自然派志向の増加や、環境教育の重要性が言及されるにつれ、グリーンツーリズムの需要も高まってきています。そこで、この地域の観光振興局との共同で、マングローブ植林地を活用したインドネシアにおける新しい余暇活動の提案や新しいサービス産業の創出、および地場産業の育成を目指して活動しています。そこで、新たなマングローブと人間社会の共存のカタチとして、マングローブ植林地の保全・活用モデルになり得る可能性を模索します。



