島の生業と海洋プラゴミ問題
2020.8~

小さなスンビラン島は、人口密度も高く農業に適した土地も限られています。そして、今、大きな課題がゴミ問題と収入の不安定さです。この島の次世代の若者達の取組を通して、離島における循環型社会、持続可能な社会とは何かを考えていきます。

スンビラン諸島の課題と次世代若者達の挑戦

カンブノ島は面積わずか23haの小さな島ですが、周辺にはサンゴ礁が広がり、かつては豊かな漁場として多くの人々が移住し、漁業で生計を立ててきました。しかし、違法なダイナマイト漁によってサンゴ礁は破壊され、漁獲量は大幅に減少しました。
その結果、1970年代以降は水産資源の減少と経済的困窮から代替生計手段として海藻養殖が導入され、現在では地域の主な生業となっています。しかし養殖過程では、フロートとして大量のペットボトルが利用され、その海域流出量は年間約2.5トンにのぼり、深刻な海洋プラスチックごみを生み出しています。インドネシア政府は2025年までに海洋ごみを70%削減する目標を掲げていますが、この問題は国内外から注目を集め、海藻養殖そのものの持続可能性が問われはじめています。
さらにカンブノ島は人口密度が134人/haと過密でありながら、ごみ処理システムが存在せず、多くのごみは海に投棄され、一部は焼却や埋め立てに頼っているのが現状です。こうした環境・衛生上の課題に直面するなかで、次世代を担う若者たちは「このままでは島の将来や生業が成り立たないのではないか」と不安や閉塞感を抱いていました。

本申請団体(アジアなりわいネット)は2021年以降、現地青年団(PEMDA)や環境NGO(MACCA)と連携し、全世帯調査や住民ワークショップを実施しながら課題整理を進めてきました。ワークショップでは以下のような切実な声が多く聞かれました。
「島にごみ処理場はないのに、海藻養殖から出るペットボトルごみ、生活ごみを燃やすことも、海に捨てることも禁止されたら、私たちはどうしたらいいのか」「海藻の価格も変動が大きく不安、減ってしまった魚をもう一度増やしたい。このままでは生業が成り立たない」こうした声を受け、住民とともに議論を重ね、2023年からは日本の漁具メーカー(西日本ニチモウ株式会社)の技術協力も得ながら、以下の取り組みを開始しました。

課題1:海藻養殖ロープの仕立て技術や素材を改良し、漁具の耐久性を向上させることで海洋プラスチックごみの流出を削減。
課題2:廃棄されたペットボトルを活用し、伝統漁具である浮漁礁(ルンポン)を作成して劣化したサンゴ礁域に設置し、海洋生物多様性の向上と水産資源の回復を促進。


インドネシア・スンビラン諸島

森と海をつなぐ森海共創プロジェクト

これまでの活動を通じ、海藻養殖ロープの仕立て改良によるペットボトル流出削減や、廃PETを活用した浮漁礁(ルンポン)の設置による水産資源回復に取り組み、一定の成果を確認してきました。しかし同時に、ペットボトル資材の耐久性の低さや島内に最終処分方法が存在しないといった、根本的な課題も浮き彫りとなりました。
そこで本事業現在では、次のステップとして「環境にやさしい海藻養殖方法」の確立を目指します。具体的には、地域の森林資源を活用した木製フロートを導入し、現地樹種による実用化を進めています。
また、この木製フロートを持続的に供給するため、シンジャイ県山間地において植林と収穫を組み合わせたアグロフォレストリーを構築しています。伐採跡地にフロート用樹種を植林し、コーヒーやクローブ・果樹との混植による収入多様化を進めることで、森林と農業の循環的活用と海の環境保全を同時に目指します。
さらに、島内に稼働していないプラスチック圧縮機や共同ごみ箱を再活用し、住民・青年団・職業高校(SMKN4)と協力して 島嶼部に適したごみ分別・処理システム を確立します。

これにより、ペットボトル廃棄の根本的な対策を進めると同時に、持続可能なごみ管理モデルを構築します。

こうした一連の取り組みは、職業高校や青年団、環境NGO(MACCA)と連携した実践型環境教育に位置づけられます。若者が木製フロートのモニタリングやごみ分別活動、植林・苗木管理に参加することで、地域の未来を担う人材育成 にも貢献しうると考えています。そして、最終的には、木製フロート(海)、アグロフォレストリー(森)、ごみ管理(暮らし)を柱に、教育・人材育成(次世代)を加えた仕組みを確立し、山と海をつなぐ域内循環型の営みを構築します。これにより、島と背後の山地を含む地域全体で資源の持続的な利用と環境保全を両立させ、カンブノ島の経済的安定と生活環境の改善を進めます。そして、この取り組みを、同様の課題を抱えるアジアの島嶼地域へ展開可能なモデルへと発展させることを目指します。


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